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和而不同

日本、台湾、ときどきアメリカ

南シナ海仲裁判決の影響

7月13日、 オランダ、ハーグにある常設仲裁裁判所は「南シナ海における中国の管轄主張」に法的な根拠がないという決定を下しました。正確には、
「中華人民共和国が主張する『九段線』は、海洋法に関する国際連合条約に違反する」。

「九段線」とは、中華人民共和国(PRC)が南シナ海に引いた九本の線を示します。
地図を見ると一目瞭然、南シナ海全部ってことですね。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/ce/9_dotted_line.png

この「九段線」元々は中華民国(ROC)が主張した「十一段線」に基づいています。

「十一段線」とは、1930年代に中国でナショナリズムが台頭した結果、1947年に中華民国の専門家たちが歴史上中国が実効支配していた島嶼であるとして領有権を決定した島々。
中華民国(中国国民党、KMT)は1949年12月7日、中国共産党に中国本土を追い出されて台湾に拠点を移しています。従って、中国共産党はそのままこの「十一段線」を継承しました。

そして1953年、ベトナム戦争の折、支援していた北ベトナム軍に恩を売るために中国共産党はベトナム近辺の線を二本削除しました。これにより十一本あった線が九本になり、「九段線」になったのです。

そもそも「十一段線」の決定根拠自体、戦後のどさくさにまぎれていて非常に怪しい。
本当に中国が実効支配していたかという謎もあって、例えば島(岩礁)の名前は英国の船乗りが使っていた英語名を中国名に直したものだったりする。Mischief Leafは美濟礁 (Mei Ji Jiao)、James Schoolが曾母暗沙(Zeng Mu An Sha)とか。

長くなりましたが、つまり、今回国際司法裁判所が「九段線」の法的効果を認めないということはつまり「九段線」に囲まれた部分即ち中国の南シナ海における主張を一切認めないということ。

これは至極全うな評価であるように思います。今後の中国の対応を省けば、さほど日本に影響があるとは思いません。

 

だがしかし、この判決には問題が存在します。それは、「太平島を含む南沙諸島には島が存在しないため、排他的経済水域(EEZ)も存在しない」と明言されたことです。
南沙諸島に存在する唯一にして最大の自然島であり、台湾が実効支配している「太平島(Tai Ping Dao)」はこの決定を持って島としての資格を剥奪されました。

「海洋法に関する国際連合条約」第8部 島の制度 第121条 島の制度 第3項によると、

人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。

とあります。太平島は中華民国軍が常駐し、井戸を持ち、ある程度の大きさがある島です。ところが、仲裁裁判所は太平島を独自の経済的生活が存在しないため「島ではない」と認定しました。

これは日本にとって致命的なダメージです。

日本の最南端とされている沖ノ鳥島はそもそも上記にある「島」としての定義が危うい状態にありましたが、それでも岩礁工事などをしてなんとか形式を保ってきました。

ところが今回の決定により、沖ノ鳥島よりはるかに大きな(何倍かははっきりとはしませんが、数十倍はあるはず)太平島が島ではなくなったことにより、沖ノ鳥島は仲裁裁判所の判断に従った場合間違いなく島ではないということになってしまうのです。

島ではない以上、そこに排他的経済水域は認められません。
地理上、沖ノ鳥島を失うことはさまざまな面からみてとても大きな痛手になります。

岸田文雄外相は12日、「仲裁判断は紛争当事国を法的に拘束する。当事国は今回の判断に従う必要がある」との談話を発表した
(日経新聞電子版2016/7/12 20:30)

 ということですが…
中国がこのまま引き下がるとも思えず、沖ノ鳥島を引き合いに出してくるのではないかと思えて仕方がないのですが、どうなんでしょうね。