和而不同

日本、台湾、ときどきアメリカ

親と子の関係、台湾と日本

昨晩のことです。
わたくし、夫に多少腹を立てておりました。クリスマスを前にして忙しさの落ち着いた土曜夜、さあ一緒に何をしようかなと心弾ませていた私を無視するように、彼が自分の両親と2時間半もSkypeでチャットしていたからです。

自分の親を大事にする、これ大事。私も親と2時間半くらい喋ることもありますし、夫が2時間半両親とSkypeしたとて一体何の問題がありましょうか。

でも、どこかで日本人の私が叫んでいる、「イヤー!!親と2時間半もべったり話し続ける男なんて、なんかイヤー!」と。

 

これは結婚当初からの問題でした。
週末になるといそいそと親にテキストメッセージを送り、金曜ないし土曜の夜というプライムタイムを親のために裂く夫。

夫…我々新婚なんだからさ、そこはホラ、二人の時間を過ごすところじゃないのか。映画見るとか。本読むとか。晩酌するとか。

そしてこれはうちの義両親だけかもしれないが、
「ハローみおさん、お元気?」
「はい元気ですお父様お母様!」
ということは一切合切無い。

夫と義両親のSkypeタイム、それは夫と義両親だけのためのもの。私は夫と同じ画面に収まり彼らに手を振ったことなど一度として無い。

 

もやもやが止まらないわけですよ。
新妻をほったらかして両親と2時間半Skypeする夫と、万事繰り合わせの上二人してモニター前から身を乗り出して喋る義両親。

これって、いわゆる、アレじゃないのか。

悩める私は友人に相談いたしました。
「うちの夫(30台既婚)、毎週末2時間近く自分の親とSkypeするんだけどさ…」

そう言うと、私の日本人のお友達はみな口をそろえて
「え…ええー?!」
と驚きを露にする。「旦那様マザコン君なのね、ご愁傷様」という控えめな同情を浮かべて「大変ねえ…」と言っていただけると、やっぱり私の感覚は間違っていないんだと再認識できる。ええそうなんです。きっとうちの夫、マザコンなんです。
古今東西老いも若いも男というものはマザコンなんだ、と年上の友人が言う。しかし何だろう、マザコンはマザコンでも、私はもう少し恥じらいのあるマザコンがいい…。

一方、台湾のお友達は概ね
「うん、…で?」
と首をかしげる。中には訝しげに「何が問題なの?日本では違うの?」と尋ねるものもいれば、「え、それ普通でしょ?2時間半もないけど、僕は毎日母に連絡してるよ」という猛者(イェール大医学部博士課程のイケメン)もいる。

 

つまり、台湾においては
 ・たとえ既婚者であろうと
 ・たとえ30歳を過ぎていようと
親と 2時間半、嫁なしでSkypeをするのは極めて普通のことなのです(真顔)。

 

台湾における親と子の繋がりは大変濃い。日本人の私からすると怖いくらいに濃い。

各家庭で差はあるにせよ、私の知る台湾の親は押しなべて過保護です。このところ耳にする日本の過保護もまた何か吹っ切ったものがありますが、台湾の過保護は根深く、むしろ過保護じゃなきゃ親じゃない、くらいの真摯さがある。

ある日夫が言いました。
「台湾の親は、子供を人生の挫折から守りたいんだよ。だから、子供が金銭的に安定しない職業に就くのに反対するんだ」
「でも、それじゃあ芸術家や研究者はどうなるの?」
「間違いなく反対するよね」
「夢に向かって挑戦する若者の人数が増えなければ、成功する人の数だって結果的に増えないわけじゃない」
「うん、それが台湾の悲劇だよね」

親は子供の将来のために、子供の夢という芽を摘むわけです。
台湾人はそれでも親の愛を疑わない。それが面白い。 

鑑みるにこれが日本だったら、
「うちの親は毒親だ、自分の価値観ばかりを押し付けて自分の夢を応援してくれない
となりそうだけど、台湾人は
「うちの親は自分の夢を応援してくれないけれど、それは自分を愛する故だ」
と変換する。 

親のしていることは同じなのに、子供の受け止め方がこんなに違うのって何なんでしょうな。興味深くウォッチング中なのであります。