和而不同

日本、台湾、ときどきアメリカ

日本社会のノミュニケーションをうらやむ

サンクスギビングのお休み中、何故か突然ウイスキーを飲みたい願望がマックスに達しました。

私「ウイスキーが飲みたいのでABC*1に行きたい」夫「いいけど・・・なんでウイスキー?みおさんの好みって男らしいよね」

 

あまりウイスキーが好きではなく、甘いカクテルを好む夫にしてみると「ウイスキーはストレートかロックで!」という私は大変 漢 らしく見えるらしい。 

確かにウイスキーは男っぽいイメージがあるなあ…

そもそもアルコールに強いわけでもなく、ワインもどちらかといえば甘口を好む私がいったいどこでウイスキーを覚えたのか。

 

~回想開始~

 

あれは私がまだぴちぴちの新入社員で右も左もわからなかった頃、Sさんという大変に酒脱な先輩がいらっしゃいました。
夏でもスリーピースのスーツを欠かさず、筆記用具はブルーブラックインクの万年筆という洒落っぷり。何故か私を猫のように可愛がってくれて私が女性であることを気にせず(……)ことあるごとにハードボイルドな世界を伝授して下さった、物好きな親切な先輩なのです。

S先輩が言うには、男たるもの
・スーツはスリーピース
・筆記具はブルーブラックインクの万年筆
・靴は良い革靴を毎日ローテーション
・車はマツダのスポーツタイプが
・いい酒はバーで覚える
・ウイスキーのチェイサーは常温で
だそうで。格好いいけど…私は女ですが…

 S先輩には何度もバーに連れて行かれ、フォアローゼス、シーバスリーガル、マッカラン、バランタイン、ボウモアにタリスカー……バーボン、スコッチ、ウイスキーの薀蓄と薫陶を受けたのはこのときでした。

 

~回想終了~

 

私「ということがあって、ウイスキーが好きになり今に至ると」
夫「日本の会社文化だよね。いいなあ」

アメリカの会社には、先輩後輩というシステムがありません。転職が盛んで「新入社員」制度がないため年功序列の概念自体が薄く、また、入社時にはそれなりのスキルを持っているものとみなされるので先輩が後輩を「指導」する習慣がない。

また、アメリカ人は会社が終わると家に直帰することが多く、アフターファイブに「同僚と飲みに行く」ことが極端に少ない。飲みに行くときはたいてい自宅に帰った後、友人や恋人と一緒。日本のように部署飲みがないので会社とプライベートの間に大きな隔たりがあります。

したがって会社の人と仕事を越えたお付き合いをする機会が少ないらしい。

いくらアメリカが個人主義社会だと言っても、チームで仕事をしなければならないことはいくらでもあるはず。

夫「そんな時、『ノミュニケーション』っていいなーと思うんだよね」
私「の、のみゅにけーしょん…古い言葉を知ってるなあ」
夫「僕も一緒に飲みに行ったり仕事を教えてもらったりできる『先輩』が欲しいけど、うちの会社にはそんな制度はないし・・・」
私「それは残念だよね」

 

あの頃当たり前でちょっと面倒くさいと思っていた会社飲みがこんなに貴重なものだとは思いもしなかったなあと思いながら、あの頃S先輩が教えてくれたようにチョコレートを齧りつつフェイマスグラウスを舐める私なのでした。

*1:Alcholic Bevarage Controlの略、ハードリカー専門店。ハードリカーは政府管轄のお店でしか買えないことになっています